認知症に立ち向かう②-老人ホームで気づいたこと-

以前、1年半以上にわたり、毎週有料老人ホームなどへ行って出張健康体操の講師役としてボランティア活動を行っていました。

 

その活動で気づいたところがありましたので、そちらを簡単に紹介したいと思います。

 

個人で整体をやっている者にとっては、権威のある機関からのお墨付きが全くないので、なかなか相手にしてもらえず、ボランティア活動でさえ何件も施設へあたって、ようやく見つかるという状況でした。

 

理由は大きく言って2つあるのではないかと思います。

 

ひとつは安全上の理由、これはわかると思います。どこの海のモノか山のモノかに任せて、もし転倒や、事故になったとき責任を負わされるのは施設側という事情があります。

 

もうひとつは忙しくて構っていられない、面倒くさいがあるでしょう。

施設側は昨今の慢性的な人手不足で日頃の業務に追われています。そんな中に、外部からボランティアを受け入れるなどは余計な仕事が増えるぐらいしか思っているかもしれません。事実、当の老人ホームも先方へ要望等を聴くと、「いえ特にありません」の一言だけで丸投げ状態になってしまいます。職員の応対も事務的になって、活動が終わったら邪魔だから、さっさと帰れという雰囲気でした。

 

他の施設でもスポットで入ったところもあり、すべてが同じではありませんが、やはりどこも余裕がないような感じがしました。

 

そんな中、当の老人ホームで健康体操教室をスタートしました。

会場に行くと、車いすに座って参加する人が約半数、残りの半数も足に不自由な人が大半です。そうするとどうしても椅子に座って体操してもらうしかありません。施設側も椅子に座って体操してもらうという前提で、最初から背もたれ付きの椅子を多く用意されています。

 

試しに「立てる方は無理のない範囲で立ってください」とやりましたが、立つ人はわずか1人で、ほとんどの人が椅子に座ることを前提で日中の生活をしているようなものです。

 

特に痛々しい思いをしたのは、年齢は80過ぎの、ある女性利用者さんです。

私が健康体操教室を始めたころは、何とか自力で歩いて会場までやってきて椅子に腰掛け、よく感想やお礼を言ってくれて明るい雰囲気で元気なおばあちゃんの印象を持っていました。しかし半年くらいたってから、足腰が弱ったせいか、車いすにとって変わりました。そこから、当初のその人とは思えないほど変わっていたのです。

 

元から認知症の気があったのでしょうか。

車いすに座ってしまうと、骨盤の下側(足元)が前にズレ、骨盤の上側(背骨側)が椅子の背もたれ側に引いて状態になっているではありませんか。そうなると骨盤が後ろ斜め前にずれ、背中は背もたれにぐったりつけた姿勢になってしまいます。

目は虚ろで無表情になり、毎週顔合わせる私に向かって「おたくどちら様ですか?」と言ったり、途中で居眠りしたかと思うと、急に叫んだり愚痴をこぼすなど小さい子どものように愚図って、介護職員さんの手を焼いてしまうくらいに急速に認知症が進んでしまっているのです。最後こちらが辞めるくらいには、反応して手足を動かすことは、ほとんどできなかったと思います。

 

他の利用者さんも多かれ少なかれ、車いすに座ってしまうと認知症が一段と進んだように見られます。

時には急にわめいたり、泣いたりというのがありました。ただ幸いに徘徊や他の人に暴力をふるうというのは見かけなかったと思います。(それがひどくなると退所させられるらしい)

 

総じて、車椅子に座ると多くの人が、いくらゆっくりやっても反応できないか、
最初から反応しようとしないかです。

 

いちばんわかりやすい例が“じゃんけんゲーム”です。

「こちらがグー・チョキ・パーと手で出して、大声で言いますから、皆さんは私に勝つように“手”をジャンケンで出して、大声で答えてくださいね」とやります。

例えば私が「パー」を出したら、「パー」に勝つためには利用者さんは「チョキ」を出せばいいのですが、
認知症が進むと、前で行っている私が出している「パー」をそのまま出すです。「あれっ、私はパーをだしてますよ、あなたもパーですよ、これではアイコですよね。私に勝つには何を出したらいいのですか?」と言っても、パーを出したままです。それで「私に勝つにはチョキですよね、チョキにしてください」と言っても、まだパーのままです。

最後、私の手が「チョキ」に変えて出せば、相手もそれに倣って「チョキ」を出すという始末です。

 

この傾向は、何とか自力で歩行できて椅子席に腰掛ける人にもいますが、車いすに座ると特に顕著です。

ひどい時は車椅子に座っている人全員が、先のような反応になるか、それとも無表情状態、居眠り状態で全く反応しないかのどちらかです。

 

”車椅子に座ると認知が進んでしまう”と言うと、車椅子を制作する関係者から怒られそうですが、
どうも座り姿勢に問題があるのではないかと思います。

特に高齢になると膝や足腰の問題で“椅子”に依存する傾向が強い。

その座り方に認知症の進行と関係があるのではないかと思ったのです。

(つづく)